【復習】2024-03-04⇒2024-03-09【相場材料とチャート】

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ざっくり振り返る 最近の相場材料

今週はドル円が2月後半から揉み合ってきたレンジを下抜けしました。日銀会合やFOMCも近いことですし、今回は触れておきたい材料が多いので『ざっくり振り返る』と『しっかり振り返る』の2部構成でお送りします。まずは各国の大まかな状況を箇条書きでざっくり振り返っていきます。

アメリカ

・1月分のCPIPPI ⇒ ともに市場予想を上回る強さだった。

・今週、発表されたISM製造業ISM非製造業 ⇒ ともに予想下振れ。製造業では『新規受注指数』で、非製造業では『雇用指数』で低下が目立った。

・今週、発表された雇用関連の指標ADP民間雇用者数JOLTS求人件数雇用統計 ⇒ 市場の受け止めとしては、いずれもドル売りで反応。(項目別では堅調だった部分もある)

・来週(3/11~)は2月分のCPIPPIが発表される。また、その翌週にFOMCを控えているためFRB高官がブラックアウト期間(政策に関する発言を控える期間)に入る。

利下げ時期については「2024年内のいずれかの時点(パウエルFRB議長)」、「5月ということもあり得るが、私は今年後半とみている(フィラデルフィア連銀総裁のハーカー氏)」など。

日本

・日銀のマイナス金利が今月にも行われる可能性があるとする観測記事が複数出て、円買いにつながっている。

植田総裁を含む日銀高官から「2%の物価目標の実現が少しずつ高まってきている」、「実現が見通せる状況になれば大規模緩和策の修正を検討していく」と、これまでと比べればタカ的な発言が出てきている。

・先週発表されたCPIは総合2.6%、コア値が2.0%と市場予想を上回って、日銀が目標とする水準に踏みとどまった。

・今週発表された毎月勤労統計によれば、実質賃金のマイナス幅は縮小している。

ユーロ圏

・今週行われたECB会合では政策金利が据え置かれ、インフレ見通しが下方修正された。

ラガルドECB総裁は会見で「賃金の伸びが緩和し始めた兆しがある」「インフレは低下傾向が続いている」としながらも、今回会合では「利下げについては議論しなかった」ことを明かした。

利下げ時期については「6月には利下げ判断に必要なデータが揃っているだろう(ラガルドECB総裁)」、「夏休み前に利下げの可能性(ナーゲル独連銀総裁)」、「4月か6月に利下げの公算が非常に高い(ビルロワドガロー仏中銀総裁)」など

しっかり振り返る 今週の相場動向

今週の高値は月曜日の150円50銭台、安値は雇用統計の発表後に付けた146円40銭台でした。それでは、今週の相場を動かした材料を時系列に沿ってしっかり振り返ってまいりましょう。

 4日月曜日は朝から日経平均株価が4万円を突破したことが話題に。後場には利益確定の売りも出たようですが、終値もしっかり4万円台に乗せています。これは半導体関連株が主導した上昇でした。ところで、先の土曜日に共同通信は「政府が『デフレ脱却宣言』の表明を検討している」と報じています(参照:共同通信)が、この月曜日、野党議員にこのことを問われた林官房長官が下記のようにコメントしています。

林官房長官
林官房長官

今のところ確たることは決まっていない。

マイナス金利解除など金融政策が変更されたことをもって、政府として直ちにデフレ脱却と判断するというものではない。

月曜日のニューヨーク時間に大きな指標はなく、翌日以降の指標をにらんだ比較的おとなしい相場でした。

 5日火曜日には東京CPIが発表されました。こちらはコアCPIが2.5%(予想2.5%、前回1.6%)、総合CPIが2.6%(予想2.5%、前回1.8%)と、無難に通過しています。それから、前日同様に『デフレ脱却宣言』を巡るコメントが複数出ています。

新藤経済再生相
新藤経済再生相

デフレについて何か宣言することは考えていない

鈴木財務相
鈴木財務相

デフレ脱却宣言を検討している事実はない

さて、この日に開幕した中国の全人代では、「2024年の成長目標を5%前後」としたほか、「1兆元規模の超長期特別国債を発行」、「1200万人以上の雇用創出を目指す」、「石油・天然ガスの探査・開発を拡大する」などといった経済テコ入れ策が掲げられました。しかし、景気減速感や不動産セクターの先行き不透明感を打ち消すほどのインパクトはなく、失望感からアジア株が売られるとともにオセアニア通貨にも売りが広がりました。ニューヨーク時間には米ISM非製造業が発表され、総合指数が52.6と市場予想(53)を下回っています。低下が目立ったのは雇用指数で、こちらは48と、基準となる50を下回って減速傾向を示しています。米債利回りは低下し、米ドルは売られました。

ISM製造業の結果については先週の記事をご参照ください

 6日水曜日は、久しぶりに日足の実体が150円を明確に割った形となりました。朝は150円にギリギリ乗ってのスタートでしたが、前夜のドル売りの影響もあってジリ下げとなるなか、16時過ぎに大きな円買いが入りました。きっかけとなったのはマイナス金利解除に関する観測記事でした。「3月の日銀会合で、一部出席者がマイナス金利の解除が妥当と意見を表明する見通し」とのこと(参照:時事)。なお、この日は三菱UFJフィナンシャルグループの関常務が「3月のマイナス金利解除もあり得る。秋には0.25%に利上げも」などとする予想を語ったこともも伝わっています(参照:Bloomberg)。さらに、ニューヨーク時間に出た雇用関連の指標(ADP民間雇用者数JOLTS求人件数)がそろって予想を下回ったことでドル売り圧力も加わり、ドル円は続落。149円で支えられましたが、その後は149円50銭を回復することなく引けています。ちなみに、注目されていたパウエルFRB議長の議会証言は波乱なく終わった印象です。

パウエル議長
パウエル議長

ソフトランディングの実現に向け良好な道筋をたどっている。

2024年内のいずれかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高い。

インフレとの闘いで勝利したとの確信を得るまでは性急に利下げに動く考えはない。

(参照:Bloomberg

年内の利下げに言及したことが好感され、エヌビディアなどのハイテク株を中心に米株が買われています。また、この日はカナダ中銀が政策金利を据え置くことを発表しています。資源国であるカナダが「利下げを検討するには時期尚早」とする声明を出したことで原油価格が上昇。カナダドルも上昇し、同じ資源国である豪ドルにも買いが波及しました。

 7日木曜日は、日本の毎月勤労統計が発表されました。1月の実質賃金は前年比マイナス0.6%で、昨年12月の前年比マイナス2.1%からマイナス幅を縮小しています。

あわてんぼうの
カエルさん
あわてんぼうの カエルさん

マイナスだけどマイナス加減は和らいでいる……?

賃金は下がってるの?円売り?円買い?

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

労働者1人当たりの1月分の『現金給与総額』は28万2270円で、前年と比べて2.0%増えてるんだ。

11月分は前年比0.7%増の28万9905円で、12月分は前年比0.8%増の57万2334円でだったよ。

これは月給制のサラリーマンだけじゃなく、日雇いやアルバイトも含めた全労働者の給与だから、額面については連休がある月は少なかったり、ボーナスが出る月はすごく多かったりする。

だから、前年の同月と比べた時の上昇率を見るんだ。

今回の数字によると、労働者がもらうお金は増えていて、しかもその増え方が加速しているみたいだね。

ただし、いくらお給料が増えても物価の上昇率のほうが高ければ、消費者が買えるものは増えない。

物価の上昇率を知るための指標、CPI(消費者物価指数)の前年同月比を見てみると、11月分が2.5%12月分が3.0%1月分が2.5%だったんだ。

12月から1月にかけて物価の上昇率が減速して、給与の上昇率が加速したということは、物価の伸び方に給与の伸び方が追い付こうとしていると読み取ることができるね。(参照:ロイター

とはいえ、実質賃金がマイナスとなったのはこれで22ヵ月連続

やや上向いたからといって、安心できる数字ではありません。

前日のドル売り・円買いの流れを引き継いでドル円は朝から売られていましたが、そこへまたしてもマイナス金利解除の観測記事が出て燃料を追加。見出しは『日銀の3月か4月のマイナス金利解除、一部の政府関係者が容認姿勢』(参照:Bloomberg)。さらに、この日おこなわれた日本国債の30年物の入札が低調だったこともあり日本国債の利回りが上昇。加えて、日銀の中川委員植田総裁がそれぞれ物価や賃金に関してポジティブな見通しを語っています。

中川委員
中川委員

経済・物価情勢は2%物価目標の実現に向けて着実に歩を進めている。

高水準の企業収益に支えられ、賃金と物価の好循環が展望できる。

(参照:ロイター

植田総裁
植田総裁

2%の物価目標の実現が少しずつ高まってきている。

実現が見通せる状況になれば大規模緩和策の修正を検討していく。

(参照:日経

当然、円買いは加速。欧州勢が出てくるとドル円は一気に148円を割る展開になりました。クロス円も総じて売られています。さて、この日の夜にはECBが金利据え置きを発表しました。インフレ見通しが下方修正されたため、一時的にユーロ売りになりました。しかし、その後に行われたラガルド総裁の会見では「利下げについては議論しなかった」という発言がありました。市場では、今回の会合で利下げ時期に関する匂わせがあるかもしれないという期待感があったため、思ったような発言が出なかった(あるいは市場が想定していたよりタカ的だった)ということで、一転してユーロは買われています。それから、この日もパウエル議長の議会証言がありましたが、前日に続いて年内の利下げに言及するとともに「利下げ開始の確信を得られるまでそう遠くない」と発言したことで米株が買われ、米ドルは売られました。ただしドル円のレートについては、ニューヨーク市場がオープンするまでに円が相当買われていたため反動で売られ、これがドルの売りを相殺した格好になりました。この日のドル円は148円台に戻して引けています。

 8日金曜日は、朝こそシンガポール勢が中心とみられる恒例のドル売りで下げたものの、その後は雇用統計に向けた様子見の揉み合いに……なるかと思われたのですが、ロンドン時間からまた急激に円買いが始まりました。原因は時事通信のヘッドラインで、「日銀、国債買い入れ規模を示す新たな「量的」金融政策の枠組みを検討」(参照:みんかぶ)という内容でした。ドル円は売られて一時147円を割り込みましたが、注目度の高い指標である米雇用統計を前にポジション整理もあって147円台に戻りました。その雇用統計の結果ですが、特に重視される指数である非農業部門雇用者数が27万5000人と、市場予想(20万人)を上回ったため、発表直後は一瞬ドル買いで反応。一方で、前回結果については下方修正が入っていました。また、失業率は3.9%(予想3.7%、前回3.7%)と悪化しています。

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

1月分の非農業部門雇用者数は予想18万人に対して35.3万人と非常に強かったんだよね。

この時、ドル円は一気に1円上昇したんだ。

前回のチャートはこちらの記事で確認できるよ。

……で、今回はこの1月分の『35.3万人』が『22.9万人』に修正されたんだ。

前回は35.3万人という数字に対して1円の上昇が発生したわけで、その数字が大きく減った分、ドル円のレートが下がるのは自然な反応だね。

ドル円は、2月分の非農業部門の結果に対して147円40銭台まで上がったあと、1月分の下方修正2月の失業率の悪化に反応して一時146円40銭台まで急落して今週の安値を付けています。その後はロンドンフィックスと週末のポジション調整もあって、147円台に戻して引けています。日足は4日連続の陰線となりました。

次週に向けて

 次週の注目材料とチャートの分析はこちらの記事で。最後までお読みいただき、ありがとうございました!