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ざっくり振り返る今週の材料

今週の高値は金曜日の雇用統計発表後に付けた148円50銭台安値はその前夜に付けた145円80銭台でしたが、こちらは水曜日に報じられた米地銀の赤字決算というニュースがリスクオフ的な債権買いや円買いを誘ったことが一因と考えられます。では、今週も全体の流れを振り返っていきましょう。

 アメリカ時間の28日日曜日(日本時間では月曜日未明)、WSJのニック記者(@NickTimiraos)がSNS投稿で、「FRBは今週のFOMCで、前回までの発表に付け加えていた『必要であれば追加利上げ』といったタカ派的メッセージを削除する」という主旨の発信をしました。FOMC前のブラックアウト期間(FRB要人が政策に関する発言を控える期間)は特に注目されるニック記者の投稿ですから、一定程度のドル売り要因になったかと思います。

 29日月曜日月末2営業日前(スポット応当日)で、まとまった円買いが入ったとみられます。また、ニューヨーク時間の終盤には米財務省が財政赤字にもかかわらず借入予想額を引き下げることが発表されています。これを受けて米債利回りが低下。ハイテク株を中心に株価が上昇し、ドル円は下落しました(参照:みんかぶFX)。

 30日火曜日は、未明に出たアメリカの借入予想額の引き下げというニュースもじわじわと効いたか、上値の重い展開が続きました。加えて、夕方に出た記事で日銀がまたもステルステーパリング隠れ量的緩和縮小)を行っていることが指摘されています(参照:日経新聞)。先週から日本の債券利回りが上昇し円買いが入りがちだったのは、この辺りにも原因があったようです。

あわてんぼうの
カエルさん
あわてんぼうの カエルさん

ステルステーパリングって何?

なんだかオシャレな響き!

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

日銀金融緩和の方針にのっとって、定期的に自国の国債を買うことで市場に資金を供給しているわけだけど、その毎月の買い入れ量をこっそり減らすことをステルステーパリングと呼ぶんだって。このニュースを聞くと「日銀は異次元緩和から正常化に向かいたいんだな」って感じるから、円買い要因になり得るね。

 FOMCを目前に控えた31日水曜日東京時間には、先週の日銀会合の『主な意見』が公表されています(参照:日本銀行)。「マイナス金利解除を含む政策修正の要件は満たされつつある」などの正常化に前向きな発言で円買いが入りドル円は147円20銭付近まで下落。一方、この日の午前中にはオーストラリアのCPI中国のPMIも発表され、いずれもアジア・オセアニア圏の景気鈍化が確認された形となって豪ドル売り米ドル買いが進行しました。これに引っ張られたドル円は一転して148円を目指す展開に。ところが、ニューヨーク市場の開場前に発表されたADP民間部門雇用者数が予想値から大きく下振れ。その15分後に発表された雇用コスト指数下振れたことで、急激にドル売りが進行。さらに追い打ちをかけるように、米地銀ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の決算が予想外の赤字だったというニュースも伝わました(参照:ロイター)。

2023年にも、この時期に市場を揺るがせた地銀危機

株価が大きく下落したことを覚えている人も多いのでは?

その時には勝ち組と目されていたNYCBが今回は赤字決算だったというニュースは、FOMC前でピリピリしていた市場に衝撃を与えました。

米地銀株が軒並み下落し、商業不動産リスクに対する懸念から債券が買われて利回りが低下

米10年債4%を割り込みドル円は一気に146円まで下落しました。

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

2023年に破綻したシグネチャー・バンクの一部を買い取ったのが、NYCBの傘下の銀行なんだよね(参照:Bloomberg)。

そのNYCBが今回、商業用不動産向け融資債権に関わる大きな損失を計上したっていうのは、インパクトが大きかったと思う。

アメリカの商業用不動産価格が下がっていることは以前から指摘されていること(参照:野村総研)だけど、改めてスポットライトが当たり、こうした流れが拡大しないか投資家は懸念し始めたみたい。

 さて、水曜日のニューヨーク時間の続きです。FOMC自体は波乱なく通過した印象でした。政策金利は市場予想どおり据え置き3月の利下げに否定的だったことが市場の行き過ぎた織り込みを剥がす形となってドル買いを誘いましたが、「利下げ織り込みが過剰だよ」というメッセージは以前から出ていましたからサプライズ感は小さかったのではないでしょうか。なお、その後のパウエル議長の会見で「労働市場が予想外に弱くなれば、早めに利下げを行うだろう」という発言があり、これが翌日の新規失業保険申請件数や金曜日の雇用統計の注目度をいっそう高めたように思います。

 2月1日木曜日に発表された新規失業保険申請件数は予想から上振れて前回より増加。労働需給の緩和を示しました。一方でISM製造業は予想値から上振れたのですが、15ヵ月連続で基準となる数値の50を下回っていることもあり、大きなドル買いにはつながりませんでした。前日にパウエル議長から雇用市場に関する発言があったこととNYCBの件もあって米債利回りは低下。ドル円は一時145円台まで下落し、今週の最安値を付けました。

 夜に雇用統計の発表を控える2日金曜日。この日の東京時間は、「新NISAによる米株買い(=ドル買い)は、毎月第2営業日に大きく入る」という話がSNSで拡散されたため仲値前後の値動きに注目が集まったのですが、結果としてはドル売りが強かったですね。欧州時間からはドル買いが入りましたが、これはショートカバーが大きかったのと雇用統計前のポジション調整もあったかと思います。注目の雇用統計ですが、強かったですね。予想が18万人だった非農業部門雇用者数(NFP)結果が35.3万人と、まさかの倍増。ドル円は148円60銭の手前まで吹き上がって、これが今週の最高値となりました。

今回はボラティリティが期待できそうで監視してたんですが、数字を見た瞬間に「これは買うしかない!」って思いましたね。ちょこっといただきました。

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

やったね!今週はスキャルパーには美味しい相場だったかも。

ただ、今回の雇用統計も中身を考えると好景気と言えるかは微妙で、やっぱり買い続けられる雰囲気ではないんだよね。

今週はアメリカの大企業代表GAFAMの決算があって、なかでもMETA(Facebook)の株価がすごく上がったんだけど、実は昨年11月に1万人以上をリストラをしてる。

人件費が減って利益率の数字が伸びたんだね。

同じようにAmazonAlphabet(Google)、それからMicrosoftも、11月頃から似たような規模のリストラをしてる。

そうしてリストラされた人たちが年明けから掛け持ちでアルバイトを始めたとしたら、その雇用契約ひとつひとつが全部、1月の雇用者数のカウントに含まれるんだ。

だから正確には「雇用者数35.3万人じゃなくて、「雇用件数35.3万件ということ。

このカウントには、自動車関連のストライキが収束して職場に戻った従業員も含まれてるよ。

次週に向けて

 今週は非常に材料の多い1週間でした。来週の注目材料は、まずは月曜日のISM非製造業景気指数でしょうか。利下げ織り込みがいったん緩んだところへ弱い数字が出てくると、また大きく反応しかねません。また、米地銀問題は引き続き注目のテーマになりそうです。年度末に向かっては輸出企業の円買いが入りやすいということもあります。流れに逆らわず、欲を出さずに利食っていきたいと思います。