今週の相場|2025年6月 Vol.2|米中協議と中東リスク(6/9〜13)

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前週から高値切り上げ・安値切り上げ!【今週の相場材料とチャート】

今週の高値トランプ大統領のSNS投稿で吹き上がった米CPI発表直前の145円50銭付近で、これは前週の高値と比べて40銭ほど上でした。

今週の安値中東の情勢不安を受けてリスクオフが加速した金曜日の142円80銭付近で、これは前週の安値と比べて40銭ほど上でした。

 

今週の高値と安値を比べると、その差は約2円70銭でした。

米中対話と中東対立、揺れる市場心理…【まるごと復習!今週の相場材料】

週足は高値切り上げ・安値切り上げとなったものの、地政学リスクで上値が重いドル円相場を中心に、今週の相場材料を復習します。

9日(月) 日足:下ヒゲ陰線

前金曜日の雇用統計で145円台を攻めきれなかったドル円は、週明けの仲値でも上値攻めに失敗すると、米中閣僚級協議を前にいったん反落。協議では目立ったヘッドラインは出なかったものの、翌日も協議を継続することが発表され、米側が対話の好調な滑り出しをアピールしたことで下値は支えられた。

時間帯ごとの相場材料

 東京時間 TOKYO Session

・前週金曜の米雇用統計でドル円は145円台に明確に乗せきれず、東京時間はその調整局面に

・週明け仲値でも上値追いは限定的で、145円を前に頭打ち

ロンドンで予定される米中閣僚級協議を前に、中国がレアアース輸出の一部を承認

 ― ただし市場では警戒感も強く、様子見の売りが出やすい地合いに

 ロンドン時間 LONDON Session

米中の閣僚がロンドンで貿易協議に臨んだ

 ― 協議の初日には特段の決定事項や成果は伝わらず

 ― ただし、翌10日も協議を継続する方針が発表され、一定の対話進展が意識された

 ― 米側は「実りある協議になっている」とアピール

 ― トランプ大統領はSNSで「好調だが容易ではない」「近く協議に加わる予定」と発信

 ニューヨーク時間 NEW YORK Session

・米中協議をにらんだ慎重なムードが続き、積極的な取引は見られず

10日(火) 日足:上ヒゲ陽線

東京時間は日銀のハト派スタンスや国内与党のバラマキ政策観測を受けて円売りが先行し、ドル円は145円台を回復。一方で午後以降は中国株売りや地政学的リスクを背景に円買いが進行し上値が重くなった。NY時間も積極的なドル買いは見られず、上ヒゲをつけて引ける展開となった

時間帯ごとの相場材料

 東京時間 TOKYO Session

・自民・公明両党、現金給付を参院選公約に盛り込む方針で一致

 ― ばらまき政策への警戒感→円売り

・植田日銀総裁「基調インフレは依然として2%を下回る」→円売り

・リスクオン地合いが広がり、日本株・米株先物が同時に上昇

 ― 背景には米中協議への期待があったとみられる

14時ごろから中国・台湾関連のネガティブ材料が浮上し流れが一転

 ― TSMCの月次売上が前月比-8.3%と伝わり、中国株売り・オセアニア通貨売りが加速

同時に円買い圧力も強まり、以下の要因が複合的に噂されるも明確には伝わらず

 ― 中東の情勢不安:イスラエルがイエメンの港を空爆

 ― 米中協議の内容がリークされたとの観測:ただし、現地ロンドンの時刻は朝の6時

 ロンドン時間 LONDON Session

・東京時間の円買いの流れを引き継ぐも、材料難で方向感に乏しい展開

・米中協議に関する公式発表は依然なく、臆測主導の神経質な値動き

・ドル円は145円を攻めきれない上値が重い推移

 ニューヨーク時間 NEW YORK Session

・次期FRB議長の候補としてベッセント財務長官の名前が報じられた

11日(水) 日足:上ヒゲ陰線

米中協議への期待感とトランプ発言を背景に一時リスクオンで上昇し、前日の高値を突破するも、米CPIの下振れでドル買いは失速。上値は145円半ばで抑えられ、高値から反落して陰線引け

時間帯ごとの相場材料

 東京時間 TOKYO Session

米中協議2日目終了後、双方が前向きなコメントを発表

 ― 米国側「交渉は順調に進捗」

 ― 中国側「ジュネーブ合意を実施することで大枠合意」「トランプ大統領が承認すれば実施」「レアアース問題も解決に向かう見通し

・中国側からも建設的な姿勢が示されたことで、一時リスクオンの円売りが優勢に

 ― ただし前日の高値(145円台半ば)を突破できず、上昇は反落に転じた

・報道:財務省、7月の買い入れ償却を所想定せず

 ― 市場は一時的に円買いで反応

 ニューヨーク時間 NEW YORK Session

トランプ大統領中国とディール成立」「中国がレアアースを供給」とSNS投稿

 ― 瞬間的には好材料と判断されドル円は前日高値を突破し一時145円半ばまで上昇

 ― 一方で「米国の対中関税は55%」「中国の対米関税は10%」との記述に市場は混乱し、乱高下

ラトニック商務長官対中関税は現状(30%)維持」(5/12に145%→30%に引下げ)

・ホワイトハウスが「(トランプ関税の)30% + もともとの関税25%で、合計55%という意味」と説明

・WSJ報道「レアアースの供給は半年間のみ

 ― 最終合意には距離があるとの見方が重石となり、145円半ばから上は攻めきれず

米5月CPI発表、コアCPIが市場予想を下回るドル売り

 ― CPI(前年同月比):2.4%(予想 2.4%、前回 2.3%)

 ― CPIコア(前年同月比):2.8%(予想 2.9%、前回 2.8%)

インフレ鈍化観測が金利低下とドル売りに波及し、ドル円は高値から反落して144円前半へ

12日(木) 日足:陰線

前夜の米CPI下振れによるドル売りの流れが継続し、朝方には中東の地政学リスク報道も加わったことで、終日リスク回避の円買いが優勢に。米指標の弱さやトランプ発言もドル円の重しとなり、高値切り下げの展開で陰線引け

時間帯ごとの相場材料

 東京時間 TOKYO Session

中東地政学リスクへの警戒感が強まるリスクオフ

 ― イスラエルがイランへの軍事作戦を準備している可能性との報道

 ― 米政府が中東駐留職員や軍家族の退避指示を出したと報じられる

トランプ大統領2週間以内に一方的に関税率を設定する」→リスクオフ

 ロンドン時間 LONDON Session

イラン政府が新たなウラン濃縮施設の建設を発表

 ニューヨーク時間 NEW YORK Session

米5月PPI発表、コアPPIが市場予想を下回る

 ― PPIコア(前月比):0.1%(予想 0.3%、前回 -0.4% → -0.2% に下方修正)

 ― インフレ鈍化が意識され、米利下げ観測が高まる

新規失業保険申請件数が市場予想を上回る

 ― 前回分も若干の上方修正が入り、労働市場の軟化を示唆

トランプ大統領米政府がUSスチールの黄金株を取得し、大統領が管理する

13日(金) 日足:陰線

未明に伝わったイスラエルによるイラン軍事施設への大規模攻撃が市場を揺さぶった。初動は円買い・フラン買いが優勢となるも、報復の即時性が乏しいとの見方が広がるとドルが巻き返し、144円台後半へと反発。下影陽線で週末を終えた。

時間帯ごとの相場材料

 東京時間 TOKYO Session

イランの首都テヘランで連続する爆発音

 ― イスラエル空軍がイランの核関連施設などを攻撃、標的は数十か所に及ぶ

 ― 「イラン革命防衛隊」の司令官(トップ)が死亡したとの報道

 ― 原油価格が急騰し、初動は円とスイスフランが買われ、その後は米ドルも買われた

・米当局者「イスラエルによる攻撃に関して、米国の関与や支援はない」

 ― トランプ大統領は閣僚級会議を招集(現地時間では20時台)

イラン革命防衛隊が声明を発表、米国に対し強い口調で非難

 ― 「イスラエルによる攻撃は米国の支援のもとで行われた」「大きな代償を支払うことになる」と警告

・IAEA「イランのナタンズ核施設、放射線量に異常なし」

イランがドローン100機をイスラエルに向けて発射と報じられる

 ― ただし、イラン側は司令官が死亡するなど被害が大きすぎ、即時にこれ以上の大規模反撃には出られないのではないかとの見方もあり、いったんの材料出尽くし感でリスクオフが巻き戻される

 ロンドン時間 LONDON Session

・週末に向けたポジション調整の動きもあり、ドル円は反発を継続

・報道:石破首相、今夜トランプ大統領と電話会談実施で調整

 ニューヨーク時間 NEW YORK Session

・米6月ミシガン大学消費者信頼感指数、市場予想を上回る

 ― 速報値:60.5(予想 53.4、前回 52.2)

・石破首相とトランプ大統領が電話会談を実施

 ― カナダで開催されるG7で対面会談をおこなうことを確認

週末の材料

14日(土)の相場材料

イラン軍「ホルムズ海峡の通航を当面禁止する」と宣言

 ― ただし、実際には船舶の通航が確認されており、宣言の実効性には疑問が残る

イラン国営メディア「イスラエルがイランのエネルギー施設を攻撃」

 ― ガス田で火災が発生したとの報道あり、原油価格への影響が懸念される

イラン軍がイスラエルへの報復攻撃を開始

 ― エルサレムやテルアビブで爆発が確認され、一部で迎撃システムが作動

15日(日)の相場材料

米露首脳がイラン・イスラエル情勢について電話協議
 ― プーチン大統領からのトランプ大統領の誕生日(14日)にあわせた電話で、祝意も伝えられたという

今週の相場をまとめると

【材料錯綜で相場も梅雨入り?中東リスクが圧力】

でした!

年内利下げ2回を織り込み【定点観測!FF金利先物】

 CMEのFedWatchツールによれば、今週、利下げ織り込みはやや前進しました。

 1ヵ月前(画像1枚目)、1週間前(画像2枚目)、そして今週末(画像3枚目)のFedWatch比較してみます。

 年内の利下げ回数については、米国の関税導入による景気後退懸念トランプ政権による圧力から、一時は年3~4回が優勢でした。しかし、先月に引き続き今月も雇用統計が上振れパウエルFRB議長が利下げ慎重姿勢を維持していることもあり、現在は年内2回が優勢となっています。

見慣れないと分かりづらいかもしれませんが、この表は「いつのFOMC会合で(縦軸)、政策金利がどの水準になるか(横軸)」について、市場がどの程度織り込んでいるか(何%の市場参加者がそう考えているか)を示す表です。