今年は辰年ですが、まさに龍が暴れているかのような年明けになっています。元日の日本列島を『能登半島で震度7』というニュースが襲ったかと思えば、翌2日には被災地に向かおうとした海保機と日航機の衝突炎上事故。言葉が見つかりません。ただ、犠牲者に哀悼を。

ドル円月足

 年が変わったので月足から見直していきます。2024年最初の月足は陽線を作り始めています。月足ボリンジャーバンドのミドルライン付近で反発した形です。

 オレンジ色の水平線は、2011年10月の安値(75.55円)と2015年6月の高値(125.85円)を基準にしたフィボナッチ・リトレースメント。一昨年と同じように、昨年も150%のライン(151円ちょうど)を一時的に超えたものの押し戻されましたね。

ドル円週足

 オレンジ色の水平線は、2022年10月の高値(151.94円)と、2023年1月の安値(127.21円)を基準にしたフィボナッチ・リトレースメント。昨年末の下落はなかなかの勢いでしたから、このまま50%のラインがある139円半ばまで落ちるのではとも思われたドル円ですが、年明けはいったん強く反発。

 140円80銭台でスタートした今週の週足は上ヒゲ付きの陽線となりました。一時は146円に迫ったものの、144.75円付近の抵抗線に引きつけられるような形で週を終えました。

ドル円日足

 正月休み明けから4日連続で陽線を形成しました。昨年11月から続く下降トレンドラインがありましたが、ここで止められたのは市場の新年初日である2日火曜日だけ。水曜日には、ロンドンの8時も待たずにトレンドラインを突破。木曜日は日足ボリンジャーバンドのミドルライン200日移動平均線も明確に超えて、144円台後半で引けました。

 金曜日はアメリカの堅調な雇用統計を受けて、あと少しで146円というところまで迫りましたが、わずかに届かず反落。ボリンジャーバンドのプラス2σにタッチして跳ね返された格好ですね。その後、今度は市場予想を大きく下回るISM非製造業景況指数を受けて一時143円台まで突っ込んだものの、143円台から144円台前半にかけては買われ、金曜日の日足は上下に長いヒゲが付いたコマ足の陽線となりました。上ヒゲのほうが長いですね。

ドル円4時間足

 昨年11月の高値(151.90円)と12月28日の安値(140.24円)を基準にしたフィボナッチ・リトレースメントで見てみると、雇用統計直後の一瞬ではありましたが50%のラインにほぼ到達したような形。半値戻しには10銭ほど届きませんでしたね。38.2%のライン付近で引けています。

今週の相場格言 『材料はあとから出る』

▶ 材料はあとから出る

価格変動の理由が注目されるのは、いつだって値動きが始まってから。「どんなにもっともらしい説明も後講釈にすぎないでしょ。理由にこだわりすぎると流れに乗り損ねちゃうぞ!」という、先人のありがた~い格言。

 市場がスタートした2日の安値が140円80銭台で、5日金曜日の高値が145円90銭台。4日間で5円も円安方向に走ったわけですが、その材料は何だったのか。SNSなどで語られた仮説はいくつかあります。たとえばこんな感じ。

SNSの声①
SNSの声①

『能登半島地震を受け、日銀によるマイナス金利早期解除の観測が後退』っていうニュースが出たけど、これが欧米で重く受け止められてるっぽい。

 具体的には、「1月解除の可能性が消滅した」と。これが値動きを生んだのだとすれば、市場が1月解除をそれなりに織り込んでいたことが前提になるわけですが……。

いくらなんでも「1月解除」なんて欧米勢もそんなに織り込んでなかったのでは?

……え?織り込んでた?そ、そうなんだ……。

 ただ、自分がどう考えるかはあまり重要ではないんですよね。市場を動かす力を持つ人たち(および彼らの手によるアルゴリズムたち)が、どういうニュースにどう反応するのかを素直に受け止め、可能であれば次に生かしたいものです。

 さて、ドル円上昇の理由付けは他にもあります。

SNSの声②
SNSの声②

新NISAが始まったことで外国株(主に米国株)の買いが大きく入ってるから、円売り・ドル買いが進んでるっぽい。

 こちらについては、流れとしてはあるのでしょう。ただ、規模としてはどの程度なのか……。昨年の時点では「相場を大きく動かすほどの金額ではない」という話が聞かれたのですが、想定されていた以上の買いが入っているということなのでしょうか。それともこの程度の動きは動いたうちに入らないということなのでしょうか。なんにせよ、新NISAを利用した外国株買いで動いたのだとすると、来週以降も同じ動きが出るのか、あるいは特定の時期だけ(たとえば月初だけ)に顕著な動きになっていくのか、思考を止めずについていきたいところです。

 もう1つ、こんな見解もありました。

SNSの声③
SNSの声③

雇用統計が強いことを事前につかんでいたヘッジファンドが他者を罠に嵌めるために債権をショートしてたっぽい。

 

利回り上昇を受けてドル円も上昇⇒市場がつられて債権をショートしているところに雇用統計で一気に買い戻し⇒ISM非製造業の悪化も受けて、大きな値幅でヘッジファンドが大儲け……ってわけ。

 これもあり得る話ではありますよね。筋は通っているし、ちょっと「そうだったら面白いなあ」とすら思います。ドラマチックというか。ワクワクしちゃう。力持つ者の暗躍、みたいな。

次週に向けて

 今週の値動きの理由付けをいくつか見てみましたが、もちろん他にもあるでしょうし、複数の材料が作用しあった結果なのでしょう。でも、いずれにせよ『材料はあとから出る』。そして未来は誰にも分からないので、来週も目の前の流れに素直に乗って、欲張りすぎずに利食っていきたいものです。