【復習】2024-03-25⇒2024-03-29【相場材料とチャート

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ざっくり振り返る 最近の相場材料

まずは各国の状況について、箇条書きでざっくり確認します。今週の出来事にはNEWマークを付けています。

アメリカ

NEW PCEデフレータ ⇒ コアデフレータ(前年同月比)の伸びが鈍化。休場のため市場の反応は限定的だったが、ややドル売り。

NEW 強いインフレ指標を受けた要人のタカ発言が相次ぎ、利下げ織り込みが後退。

・2月分のCPIPPI ⇒ 1月に続いて市場予想を上振れる堅調さで、市場はドル買いで反応。

・3月に発表された雇用関連の指標(ADP民間雇用者数、JOLTS求人件数、雇用統計) ⇒ 市場はいずれもドル売りで反応。(項目別では堅調だった部分もある)

日本

NEW 東京CPIは2.6%で横ばい。

NEW 有効求人倍率は1.26倍、失業率は2.6%と、雇用については悪化。

・日本のCPI総合は前年比2.8%で3ヵ月ぶりの高い伸び率。

しっかり振り返る 今週の相場動向

今週の高値は水曜日の午前中に付けた151円97銭で、安値は同日の午後に付けた151円02銭でした。それでは、今週の相場を動かした材料を時系列に沿ってしっかり振り返ってまいりましょう。

Monday 25日月曜日は、東京市場が開場する前に神田財務官から強めのけん制発言が出ています。

神田財務官
神田財務官

現在の為替動向には違和感を持っている。

大きな変動がみられ、ファンダメンタルズに沿っていない。

日米金利差は明らかに縮小し、今後も縮小が期待される。

これを受けて円買いが強まりましたが151円は割れず、期末のドル買いもあって仲値に向けてドル円は上昇。仲値が決まると再び緩み、その後は方向感を探る展開に。

この朝は豪ドルがやや買われています。オーストラリアの財務相が最低賃金の引上げを要請したことや、中国商務次官が貿易を強化する方針を明かしたこと、翌々日に発表される豪CPIは伸びが加速すると予想されていることなどが材料となったようです。しつこいインフレに悩まされているオーストラリアは年内に利下げを開始できるか不透明な状況ですが、豪財務相からは「賃金を上げることでインフレが加速する心配はない」という主旨のコメントが出ています。

また、中国人民元が対ドルで急上昇しています。この原因について、中国国有銀行が元安に歯止めをかけるべくドル売り元買いを実施したためという報道がありました。これもオセアニア通貨には追い風になりました。

ニューヨーク時間に大きな指標はありませんでしたが、アトランタ連銀のボスティック総裁クックFRB理事の発言が報じられています。

ボスティック総裁
ボスティック総裁

GDPが高水準にあり、なおかつ労働者の雇用が確保されているのなら、インフレ率を2%に下げることを急ぐ必要はない。

自分としては現状に満足している。

年内の利下げは1回にとどまるのではないか。

(参照:Bloomberg

クックFRB理事
クックFRB理事

インフレ率はしっかり低下しており、雇用は堅調。

バランスが取れている。

金融政策の緩和は時間をかけて、慎重に行うべき

(参照:Bloomberg

Tuesday 26日火曜日は、鈴木財務相が強めの円安けん制発言をしています。

鈴木財務相
鈴木財務相

過度な変動は経済に悪影響を及ぼし望ましくない。

円安による弊害を最小化すべくできる限りのことをしていきたい。

発言に対する市場の反応は薄く、ドル円は前日と同じ水準での小幅な値動きに終始。

ニューヨーク時間にはドルが買われ、ドル円は151円60銭まで上昇しました。この理由のひとつとして、米耐久財受注が予想1.1%に対し結果4.4%と上振れていることが挙げられます。前回、前々回はマイナス圏でしたが3ヵ月ぶりの増加。

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

耐久財受注は景気先行指数に分類される経済指標だね。

企業の設備投資の動向を見るのに参照されるデータで、この指標が上向くということは企業が景気の先行きに楽観的であることを示唆するんだ。

Wednesday 27日水曜日はドル円がせわしない動きをする1日となりましたが、まず朝にオーストラリアのCPIが出ています。予想3.5%に対して結果3.4%と若干下振れたことで豪ドルは売られました。

さて、ドル円ですが、仲値前後までは実需のドル買いと投機的な売りの引っ張り合いとなって結果的には狭い値幅での推移が続きました。しかし、10時ごろに日銀の田村委員の発言が報じられ、これがハト派と受け止められて円売りが強まり11時までに151円80銭を付けています。

田村委員
田村委員

政策正常化の一歩を踏み出したが、副作用の残る状況が続く。

当面は緩和的な金融環境が継続する

国債買い入れの継続は能動的なものではなく、不連続を避けるため。

ドル円は11時台には昨年と一昨年の高値を突破し、151円97銭と、152円まであと数銭に迫りました。1990年7月以来の円安水準です。日銀審議委員の中では比較的タカ派とされている田村委員のハト発言が、特に海外勢から材料視されたと思われます。これを受けて12時過ぎに鈴木財務相から強めのけん制発言が報じられています。

鈴木財務相
鈴木財務相

円相場について高い緊張感をもって見ている。

行き過ぎた動きにあらゆる手段を排除せず断固たる措置をとる

発言を受けて、ドル円は151円60銭付近まで急落。その後、18時前までに151円80円台まで回復。

財務省・金融庁・日銀の3者会合が行われるというニュースが流れたのは18時頃でした。ドル円は151円08銭まで急落。会合後に神田財務官が記者の質問に応じています。

神田財務官
神田財務官

2%物価目標の安定的実現が見通せる状況。

2週間でドル円は4%変動しており、ファンダメンタルズに沿っているとは到底いえない

背景に投機的な動きがあることは明らか。

三者会合では、過度な変動は望ましくないと確認。

(為替介入するのかと問われ)あらゆる手段を排除せず、適切に対応する。

日銀当局者からは「外為市場が経済や物価の動向に影響するなら、日銀は金融政策で対応する可能性がある」と聞いている。

ちなみに、この会合に出席した3者は

・財務省 神田財務官

・金融庁 栗田長官

・日銀 清水理事

……とのことです。

この強い円安けん制発言を受けてもなおドル円は151円が堅く、結局この日一度も割れずに151円30銭台で取引を終えています。

Thursday 21日木曜日は朝からウォラーFRB理事の発言がありました。

ウォラー理事
ウォラー理事

最近のインフレ統計の結果は期待どおりではなかった。

慌てて利下げをする必要性を示す材料はない。

利下げ開始時期を遅らせるか利下げの回数を減らすべき

講演のなかで合計4回も「利下げを急ぐ必要はない」と強調した、というニュースが伝わってややドル買いになっています。ただ、対円では前日の円安けん制が効いて上値が重く151円の半ばを回復できない展開。

9時前に日銀の『主な意見』が公表されています。

・予想を上回る春闘の動向のほか、史上最高値を越える株価上昇も加わり、先行きに対する期待が高まっており、日本経済は歴史的な変曲点を迎えている可能性がある。

・今回の見直しは金融引き締めへのレジーム転換ではなく、あくまで「物価安定の目標」の実現に向けた取り組みの一環。

・「仮にマイナス金利政策を解除しても当面緩和的な金融環境が維持される」という理解が市場に浸透している。今回の措置で金融市場で大きな変化が起こる可能性は低い。

全文はこちら⇒『金融政策決定会合における主な意見 (boj.or.jp)』。この内容を見る限り、マイナス金利解除に際して日銀が懸念していたのは、たとえば「急激に日本株が売られる」とか「円キャリートレードが急速に巻き戻されて市場が混乱する」とか……いずれにせよ、円売りが進むこととは逆のことだったかもしれません。

ドル円は前日の3者会合が効いたか、ややドル買いが出ているなかでも上値の重い展開が続きました。

この日は21時前に岸田総理が臨時の会見を開いています。予算成立を受けて経済に関する発言をするということで、「これは円安けん制のためにもデフレ脱却宣言でもするのでは」とSNSはちょっとざわついたのですが、結果的には市場に影響はありませんでした。

岸田総理
岸田総理

我々はデフレから完全に脱却する千載一遇の歴史的チャンスを手にしている。

昨年を大きく上回る賃上げ、史上最高水準の設備投資、史上最高値圏の株価。

数十年に一度の正念場と認識している。

Friday 22日金曜日はグッドフライデー(イースター前の金曜日)で、オセアニア・香港・シンガポール・欧米の各市場が休業。1日を通して、151円30銭台を中心とした狭い値幅での推移にとどまりました。

朝は日本の雇用統計東京都区部のCPIが発表されています。雇用については、完全失業率が2.6%と、前回から0.2ポイント上昇。有効求人倍率も低下しており、冴えない結果東京CPIの総合値は予想2.5%に対して結果2.6%と、まずまずの数字

今年度最後となった仲値決めは、輸出のドル売り・円買いが大きかったようです。

夜には米2月PCEデフレータが発表されています。結果はコアデフレータの前年同月比が2.8%と、前回の2.9%から鈍化。前々週に発表された2月CPIが強かっただけに今回のPCEも強いのではないかという懸念が先行していたため、事前にやや株が売られててドルが買われていました。そのため、巻き戻しの株買いとドル売りが出ていますが、値動きは限定的でした。また、パウエルFRB議長の発言を受けたドル買いもあり、ドル円は151円30銭に戻して週を終えています。

パウエルFRB議長
パウエルFRB議長

(PCEデフレータを受けて)インフレ率は今年を通じて鈍化傾向をたどるとの自信が深まった。

米経済は好調で、利下げを急ぐ必要はない。

次週に向けて

次週の注目材料とチャートの分析はこちらの記事で。最後までお読みいただき、ありがとうございました!