【復習】2024-03-18⇒2024-03-23【相場材料とチャート】
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今週は日銀会合やFOMCをはじめ、各国の政策金利が発表されました。まずは各国の近況について、箇条書きで見ていきます。今週の出来事にはNEWマークを付けています。
アメリカ
NEW FOMCは金利据え置き。直近の強い指標にもかかわらず年内の利下げ見込みが3回に据え置かれるなど、市場にはややハト派と評価されてドル売り。
・2月分のCPIとPPI ⇒ 前回に続いて、いずれも市場予想を上振れる堅調さで、市場はドル買いで反応
・ISM製造業、ISM非製造業 ⇒ ともに予想下振れ。製造業では『新規受注指数』で、非製造業では『雇用指数』で低下が目立ち、市場はドル売りで反応。
・雇用関連の指標(ADP民間雇用者数、JOLTS求人件数、雇用統計) ⇒ 市場はいずれもドル売りで反応。(項目別では堅調だった部分もある)
日本
NEW マイナス金利解除。長期国債の買い入れを継続。ETFの新規購入を停止。発表の瞬間は円買い、その後は円売りで反応。
NEW 2月分のCPI総合は前年比2.8%と予想値からは下ぶれたが3ヵ月ぶりの高い伸び率。
・GDP二次速報は年率プラス0.4%と、一次速報のマイナス0.4%から上方修正。
オーストラリア
NEW 政策金利は据え置き。声明に変化。前回「追加利上げの可能性を排除しない」⇒今回「あらゆる選択肢を排除しない」。「利上げ」というキーワードが入らなかったことを受けて、市場は豪ドル売りで反応。
イギリス
NEW 政策金利は据え置き。前回は9人中2人が利上げを支持したが、今回は利上げ支持0人に。市場はポンド売りで反応。
NEW ベイリーBOE総裁、最速で次回会合(5月9日)の利下げも否定せず。
今週の高値は金曜日の仲値後に付けた151円80銭台。安値は月曜日の148円90銭台でした。それでは、今週の相場を動かした材料を時系列に沿ってしっかり振り返ってまいりましょう。
Monday 18日月曜日は翌日からの政策金利の発表ラッシュを警戒して、どの通貨ペアも基本的には様子見ムード。直近の経済指標が強かったアメリカについては、FOMCの声明がタカ的になるのではという見方があり、米債利回りが上がってドルが買われています。また、午前中に発表された中国の工業生産と固定資産投資が市場予想を大きく上回り、オセアニア通貨がやや買われています。
Tuesday 19日火曜日は日本とオーストラリアの政策金利が発表される日。日銀のマイナス金利解除に関しては前々週あたりから繰り返し報道されてきて、すでに織り込み済みとみられる状況でした。想定される展開としては、仮にネガティブサプライズがあれば当然円売り。マイナス金利解除でも「事実で売る」パターンの円売りか、というところ。いつものことながら日銀の発表時間は定まっておらず、12時が迫るにつれて痺れを切らした円売りが始まるなど、方向感はすでに市場が決めてしまっている印象でした。12時14分頃、一瞬だけ円買いが入りましたがこれはNHKの速報で『日銀はマイナス金利政策解除などの議案を提案した』と流れたため。結局、12時半に先にオーストリア中銀RBAの決定内容が発表されています。
日銀の発表は12時35分頃でした。事前の報道どおり、マイナス金利は解除。長期国債の買い入れは継続するものの、ETFの新規購入は停止するという内容でした。149円30銭前後で発表を迎えたドル円は、利確や損切りが交錯し一瞬149円を割ったものの、直後から強い円売りの流れが始まりました。植田総裁の会見が始まる15時半までには150円30銭付近に到達。植田総裁の発言はおおむね以下のような内容で、特にサプライズはありませんでした。
大規模な金融緩和政策は、役割を果たした。
当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。
今年の春闘でもしっかりとした賃上げが実現する可能性が高い。
賃金上昇を受けてサービス価格の緩やかな上昇が続いており、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきている。
長期国債の買い入れについては、バランスシート縮小を視野に入れていくつもり。
将来のどこかの時点で買い入れ額を減らしていくことも考えたいが、今は具体的に申し上げられない。
ETFの処分(売却など)について、どうすべきかは常に考えているが、いつからどういうふうに処分を始めるかという点は、確たることは申し上げられない。
会見中は長期国債の買い入れ縮小に関する発言などもあって警戒感からドル円は一定の利確売りも出ましたが、150円に近付くと積極的に買われました。会見が終わるや、安心して円売り再開というムードに。ロンドン時間が始まると150円台後半に突入。この水準は2月下旬にさんざん揉み合って抜けきれなかった高値圏なのですが、ニューヨーク勢が参戦してくると2月の最高値(150円88銭)も抜き150円96銭まで付けています。その後も戻りは弱く、150円80銭台で引けています。
Wednesday 20日水曜日は日本が春分の日で休場でした。しかも夜にはFOMCが控えていたため、それほど値動きが出ない展開も考えられましたが、実際には前日のドル円買いの流れを継いで朝から強い買い機運が続きました。9時も待たずに151円の壁をあっさり突破すると、昼過ぎには151円50銭に到達。
まさかFOMC前に昨年の高値(151円90銭)を突破してしまうのか!?と思うほどの円売りでした。
目の前で円の価値が下がっていく様子を見ているのと、日本人としてはちょっと怖くなっちゃいます…。
ニューヨーク市場のオープンとともに151円80銭台の年初来高値を付け、昨年の最高値まであと10銭に迫ったところでさすがに利確が出たか、反転しています。
ここで、いよいよ今週のハイライト、FOMCです。まず市場の事前予想としては、直近のCPIなどの重要指標が強かったため、今回はタカ化するのではないかという見方がありました。特に年内の利下げ回数について、前回会合では「3回」とされていたのですが、今回は「2回」に後退するのではないかという懸念があって、これに対する警戒感から事前に債権や株が売られてドルが買われていました。そして日本時間27時(午前3時)に発表された今回の決定内容ですが、年内利下げが「3回」に維持されていたほか、声明文にも特段のサプライズはなく無難に通過。安堵感から株が買われてドルはやや売られていますが、直後にはそれほど大きな値動きはありませんでした。ドル円が動いたのは午前3時半ごろ。これはパウエルFRB議長の会見の時間で、実際ハト派な会見だったという評価もみられます(参照:【FOMC】パウエル議長はハト派に明確に傾いた-市場関係者の見方 – Bloomberg)。しかし、値動きの原因はどうもこの会見だけではなさそうです。実はこの日の19時頃に日経新聞から「日銀が10月か7月の会合で追加利上げをするかもしれない」とする観測記事が出ていたのですが(参照:日経)、これの英語版が午前3時半に発信されているのです。この記事によってドル売りだけでなく円買いも出ています。
3時半はドル売りが発生してドル円は下がる一方、ユーロドルのようなドルストレートの通貨ペアは上がってるんだ。
それなのに、ユーロ円のようなクロス円の通貨ペアは急落してる。
対ドルで買われているユーロが対円では下がっているのは、円買いがあったってことだね。
Thursday 21日木曜日の東京時間はドル売りと円買いで始まっています。円買いについては、前日に出た日経新聞の記事の影響があったとする見方もあるようです。また、昨年の高値である151円90銭を「目指したのに届かなかった」ということが、いったん利確の売りを誘ったということもあるでしょう。この日は夜にアメリカの指標が複数出ていますが、製造業PMIが52.5と、市場予想の51.8上回っています。前回結果の52.2を上回っていることも注目ポイントですね。この結果を受けてドルは買われ、ドル円は上値が重いながらも151円の後半に戻して引けています。
Friday 22日金曜日は日本のCPIが出ています。総合値が市場予想2.9%に対し結果は2.8%と下振れたものの、前回の2.2%から続伸。また、生鮮食料品を除くコア値は予想2.8%に対して結果2.8%で、こちらも前回の2.0%から続伸。8時半の発表直後の市場は円売りで反応。仲値のドル買いの勢いも手伝って、前々日に付けた年初来高値をわずかに更新しています。しかし、昨年の高値である151円90銭にはまたしても届かず反転。11時から日銀の植田総裁が参議院財政金融委員会に出席する予定だったため、その前に手仕舞いの売りがあった可能性もあります。その植田総裁の発言は下記。
大規模緩和は役割を果たしたとして終了した。
国債買い入れの継続で、ネットの国債残高はしばらく現在の水準で推移する。
長期金利の形成は基本的に市場に任せる。
国債購入は政策変更の消化の様子を見て、将来的に減額する。
この発言のあとは週末ということもあってドル円の買い機運は続かず、結局10時台の高値が日通しの高値となりました。上値を攻めきれないと見た欧米勢は下げ攻勢に転じましたが、下は下で151円が堅く、151円30銭台で今週の取引を終えています。
次週の注目材料とチャートの分析はこちらの記事で。最後までお読みいただき、ありがとうございました!