【復習】2024-07-29 ⇒ 2024-08-02 【相場材料とチャート】
この記事はで読むことができます。
今週の高値は火曜日の東京時間終盤に付けた155円20銭台で、これは前週の高値と比べて2円40銭ほど下でした。
今週の安値は米雇用統計後に米ドル売りが強まって付けた146円40銭台で、これは前週の安値と比べて5円50銭ほど下でした。
高値と安値を比べると、その差は約8円80銭。(880pips!)
非常にボラティリティの高い週でしたね。
・前週末、アメリカのイエレン財務長官が為替介入に関して「問題視しているのは、米国やほかの国を犠牲にして貿易黒字を達成しようと通貨を操作する国」、「日本の状況は異なる」などと発言。円高誘導のための為替介入については容認した形に。⇒これを受けて、月曜日は仲値決め後に円買いが強まる。
・日銀会合は賛成7人・反対2人で追加利上げを決定。国債の買い入れ額も減額。
・FOMCは9月FOMCでの利下げを匂わせるハト派な金利据え置き。
・BOEは賛成5人、反対4人でコロナ禍のあと初めての利下げを決定。
・米新規失業保険申請件数は市場予想を上回り、労働市場の軟化を示した。
・米ISM製造業は市場予想を下回り、8カ月ぶりの低水準となった。
・米雇用統計は、注目度の高い非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を大きく下回った。⇒これを受けて、ドル円は149円付近から147円まで急落。戻りを試すも売りが強まり深夜には146円台半ばまで落ちた。
中銀会合ラッシュに加えて雇用統計まで……。
非常に濃い1週間でした。
日銀の利上げ観測記事はガセじゃなかったね。
SNSでは「どうせ今回も発表と同時に円売り再開でしょ」みたいな声も見かけたけど、終わってみれば見事に150円割れ!
ハト派なFOMCに雇用統計の下振れとドル売り材料が続いたこともあって、ドル円は2023年1月から続いていた上昇トレンドラインをついに割り込みました。
150円前後の攻防は2022年から何度か繰り広げられてきたけど、今回は週足1本だけで一気に貫通したね。
これは明確にファンダメンタルズの転換があったから。
また、日経平均株価も3週連続の大陰線となって、今週の終値は3万6000円を割っているよ。
とはいえ、2020年のコロナショックでは2万円を下回っていたし、今年の年初でも3万3000円台だったから、長く投資している人はあまり慌てていない印象。
ただし、今年はNISA制度が新しくなったことで新たに投資を始めた人も多いんだよね。
新NISA開始時になんとなく積立投資を始めたっていう人のなかには、やっぱり不安に思っている人もいるみたい。
分かるなぁ。
相場が大きく動く時って、情報が多かったり動きが早かったりして焦るんだよね。
でも、ぼくが慌てて利確をした時に限って、翌日にはあっさり戻ったりするんだ……。
ところで、今回はFOMCのあとにISM製造業と雇用統計がそろって下振れたことで、SNSでは「7月FOMCで利下げしておいたほうがよかったのでは」「緊急利下げもあり得るか」っていう意見もみられたけど、そんなにマズい状況なの?
今週の指標結果を受けて、シティグループやJPモルガン・チェースのアナリストも利下げ予想を変更しているんだ。
両社の予想では9月が50bps(0.50%)、11月も50bps(0.50%)、さらに12月に25bps(0.25%)の利下げとなっているよ。
ちなみに、雇用統計についてはハリケーンの影響が指摘されているね。
再雇用を前提とした一時的な解雇が25万人ほどあったらしいんだ。
さて、値動きが激しい時ほど冷静に相場材料を確認したいですね。
今週は雇用統計もインパクトがありましたが、やはりファンダメンタルズの基本は各国中央銀行の政策。
各中銀のトップが会合後の会見で何を語ったのか、振り返っておきましょう。
・FRBの責務である「物価安定」と「雇用の最大化」、両サイドのリスクを注視する。
・この2年で両方の目標について大きな進歩があった。
・労働市場の需給のバランスは改善した。
・労働市場が予想外に弱まった場合、対応する準備ができている。
・最近の指標は、経済が引き続き堅調なペースで拡大していることを示唆。
・FOMCは利下げに近付いているという感触を得ており、9月FOMCで利下げが選択肢になる可能性がある。
・年内の利下げ回数はゼロから数回。
・労働市場が軟化しており、インフレの上振れリスクは減少している。
・今回のFOMCで利下げの是非について真剣な議論が行われた。
労働市場を気にしているように聞こえたよ。
・政策金利(無担保コール翌日物金利)の誘導目標を0〜0.1%程度から0.25%程度へと引き上げ。賛成7人・反対2人。
・経済・物価は、これまで示してきた見通しに沿って推移。大企業では春闘で大幅な賃上げが実現。他の企業でも広がる見込み。
・輸入物価は上昇に転じ、先行き物価の上振れリスクに注意する必要がある。
・国債の買い入れ減額については、全員一致で決定。
・今後の利上げについては、現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえれば、引き続き緩和の度合いを調整していくことになると考えている。
・年内のさらなる利上げについては、データ次第ではあるが実施する可能性はある。
・(0.5%以上の利上げもできるかとの質問に対し)0.5%は特に壁として意識していない。
年内の追加利上げも選択肢にあると語ったことが円買いを加速させました。
植田総裁は学者さんであり、正直かつ論理的にお話をされるかたという印象。
可能性が完全にゼロでない以上は否定的なことを言うわけにはいかないので、当然のご発言ではあります。
・賛成5人、反対4人で利下げを決定。
・拙速、あるいは過剰な利下げには慎重。
・インフレ圧力の緩和度合いは現時点で利下げに足る。
・8月のサービスインフレは上昇する可能性があるが、年末に向けて緩和されるだろう。
・ひとつのデータだけで方針を転換すべきではない。
・今後の会合で連続利下げが実施されるという見方には注意を促したい。
・世界的な金融危機後の数年間に見られたようなゼロ近辺の水準まで金利が低下する可能性は低い。
利下げはある程度は織り込み済みだったとみられ、発表後は一時ポンド買いが強まる場面も。
最終的には対円でも対ドルでもポンドの週足は陰線で終わってるね。
CMEのFedWatchツールで、利下げ織り込み度を確認します。
先週末と今週末のFedWatchを比較すると、利下げ織り込みは前進しています。1つめの画像が先週末のFedWatch、2つめの画像が今週末のFedWatchです。9月会合での25bps利下げ織り込みは88.2%から78.0%に減少。その代わり、50bpsの利下げ織り込みが11.5%から22%と倍増しています。
見慣れないと分かりづらいかもしれませんが、これは「いつのFOMC会合で(縦軸)、政策金利がどの水準になるか(横軸)」について、市場がどの程度織り込んでいるか(何%の市場参加者がそう考えているか)を示す表です。
次週に発表されるアメリカの主要な指標はISM非製造業景気指数と貿易収支。それから、ブラックアウト期間明けのFRB要人による発言にも注意。
5日月曜日に発表されるISM非製造業景気指数については、今週発表済みのISM製造業景気指数がサプライズ的な弱さだったこともあって要警戒。特に雇用部門の悪化が目立ちました。雇用統計も大幅に下振れているだけに、仮にISM非製造業も雇用の悪化を示した場合はリセッションとの見方が強まってくるかもしれません。
また、日本の実質賃金が6日火曜日に発表されます。日本の追加利上げに海外からも注目が集まっていますから、欧州時間以降に値動きが激しくなる可能性も頭に入れて冷静に立ち回りたいところ。8日木曜日には今回の日銀会合の『主な意見』も公表されます。