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ざっくり振り返る今週の材料

今週の高値は金曜日のロンドン時間に付けた149円50銭台で、日銀の内田副総裁の発言をきっかけとした円売りによるものでした。安値は7日の夜に付けた147円60銭台で、こちらは米地銀問題に絡んだ金利低下が主因だったかと思います。

 5日は月初かつ週明け月曜日のゴトー日でした。パウエルFRB議長が出演したテレビ番組で「FRBが3月利下げの自信を持つ公算は小さい」という発言をしたこともあり、仲値を待たずして年初来高値を更新しました。ただし、その後は米地銀問題もあってドル円の上値は重く、夜にISM非製造業が上振れして一時的に買われた以外は限定的な値動きでした。

 6日火曜日のニューヨーク時間には、イエレン米財務長官が議会証言の中で商業用不動産リスクについて触れました(参照:Bloomberg)。先週米地銀NYCBの赤字決算というニュースを受けて銀行株の売り・債券買い・ドル売りが入っていたわけですが、イエレン財務長官が言及したことで再び材料視されました。ドル円は下落。ちなみに、NYCB株は赤字決算の発表前と比べて、この時点で60%以上も下落していました。

 7日水曜日の夜は、米エネルギー情報局(EIA)が自国の産油量見通しを下方修正しています(参照:ロイター)。米債利回りが上昇し、ドル円は買われました。

 8日木曜日は、内田副総裁の発言をきっかけに大きく円売りに傾きました。奈良金融経済懇談会での冒頭挨拶だったのですが、なかでも注目されたのは「仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思います」という部分でした(参照:日本銀行)。この内容自体は植田総裁が日銀会合後の会見でおっしゃったことと変わりないはずなのですが、方向感を決めかねているマーケットにとっては利確や損切りの口実にしやすかったのかなという印象。ドル円は1月後半から止められていた148円80銭付近を突破しました。夜にはアメリカの新規失業保険申請件数が3週間ぶりに減少し、雇用の堅調さを示唆。円売り材料にドル買い材料が重なったことで、この日は149円にしっかり乗せて引けています。

 9日金曜日植田総裁が衆議院予算委員会で、前日の内田副総裁と同様に「マイナス金利を解除しても緩和的な金融環境は当面続く」という主旨の発言をされ、この日も円売り基調でした。ただし大きな節目である150円を前に、鈴木財務相のけん制発言(参照:日経新聞)も入り149円の半ばは重たく、かといって下げる材料もなく揉み合いに。昼過ぎには国際通貨基金(IMF)から「日銀はYCCと量的・質的緩和の撤廃を検討すべき」「政策展望期間(3年間)にわたって政策金利を段階的に引き上げるべき」などとする提言がなされています(参照:Bloomberg)。しかし、この材料での円買いは限定的で、ロンドン市場がオープンするとドル円は149円50銭を一時的に抜けて年初来高値を更新しました。一方、夜に発表された米CPIの年次改定では、12月分が0.3%から0.2%に下方修正されてドル売りに。それでも149円は割れず、今週は149円20銭台で引けています。

ドル円週足

半月以上、抜けなかった水準をようやく突破したドル円。ここで週足を確認しておきましょう。

 先々週先週と2本続けて十字線だった週足が、今週ははっきりと陽線で終わっています。1月9日に下値を支えた200日移動平均線ですが、それ以降は近づくことなく上昇に転じています。

 続いてボリンジャーバンドを見てみます。昨年末の下落でミドルラインを割ってマイナス2σにタッチしましたが、年明けから3週連続の陽線で一気にミドルラインの上に出ています。その後の2週については一時的にミドルラインを割ることもあったのですが、週の終わりまでにはしっかりミドルラインの上に実体を戻して引けていますね。今週の下値もミドルライン(147円半ば)で支えられていたように見えます。

 最後は2023年の安値と高値を結んだフィボナッチリトレースメントです。昨年末の下落はなかなか勢いがあったのですが、それでも140円は堅かったか、半値戻しのラインである139円50銭台には届かずに上がってきた格好です。

こうして見ると、まだ簡単には下げそうにないって気がしますね。

日銀のマイナス金利解除は既定路線で、ある程度はチャートに織り込み済みとも考えられるし、積極的に円を買っていく理由は見当たらないかな……。

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

アメリカの利上げ局面が落ち着いたとはいえ、やっぱり利下げの織り込みがあまりにも性急だったよね。

ここまでは、行き過ぎだったドル売りの揺り戻しと思えば不自然じゃない。

今週、カシュカリさんが「今年2~3回の利下げが適切」と発言したけど(参照:Bloomberg)、昨年末時点では市場は7回の利下げを織り込んでいたんだもんね。