ざっくり振り返る今週の材料

 今週の高値は金曜日の午後3時半頃に付けた148円80銭台で、これはショートのストップロスを巻き込んだと思われる上昇によるものです。一方、安値は週が明けた直後の144円80銭台でした。大まかな流れを振り返ります。

 1月1週目2週目のドル円やクロス円の上昇を受けて円安進行がコンセンサスとなりつつあるなか、先週末14日日曜日にはアトランタ連銀のボスティック総裁から「夏までは金利を据え置くべき」(参照:フィナンシャル・タイムズ)という主旨の発言が出るなど、アメリカの早期利下げ期待を裏切る材料が続いてます。

 新たな材料を待つ週明けの15日月曜日は、東京時間でもロンドン時間でもドル円はジリ上げが止まりませんでした。ニューヨーク市場はキング牧師の記念日で休場。

 16日火曜日の午後には「連休明けのアメリカ勢が入る前に、いったん調整しとく?」という雰囲気の揉み合いも見られましたが、結果的にはロンドン市場の開場と共にストップロスを巻き込んで強く上昇。しかし、この時点でも3月のFOMCでの利下げ織り込みは65%と依然高く、深夜にはFRBの理事であるウォラー氏から「利下げを急ぐ理由は見当たらない」と、牽制するような発言が出ました(参照:ブルームバーグ)。これを受けて米債利回りは上昇。ドル円も一気に147円を突破しました。

 17日水曜日には戻りを試すも147円が割れず、午後から一転して上昇し今度は148円の突破を試みました。そして夜には、今週の注目指標だった小売売上高が予想値から上振れたことを材料として148円台50銭台まで吹き上がりました。

 18日木曜日はジリ下げ展開でした。状況を言葉にするなら『次週に日銀会合を控えるなかで、そろそろ利食っておきたい人』と『 ちょっと下がったら買ってみたい人』との間でポジションのバケツリレーが発生して、上のほうで出来た『にわかロング』的ポジションが徐々に切らされいった……という感じ。それでも147円半ばは堅く、夜にアメリカの新規失業保険申請件数が上振れしたことを燃料にして再度上値チャレンジ。また、日曜日にもタカ発言をしていたボスティック総裁が改めて「利下げ開始は7-9月期(第三四半期)になる」との考えを示しました(参照:ブルームバーグ)。

 19日金曜日は、高値更新を目指して上昇し始めた昼前に鈴木財務大臣から「ファンダメンタルズを反映し安定的に推移することが重要」という発言が出ました。ドル円は一時的に下げたものの、昨年さんざん口先介入を受けて慣れ切っているマーケットは14時半ごろから高値を更新。しかし、抵抗線のある148円80銭まで届いたところで怒涛の反落が始まり、欧州勢、次いでロンドン勢が揃ってアジアのロングを潰しにかかりました。結局4時間かけて下げ続け、1円近く下落させたところでようやく満足したようです。夜には米ミシガン大学消費者信頼感指数予想から上振れましたが、捕まっていたロングの利食いが入ったことや米中古住宅販売件数予想を下回ったこともあり、上値は伸ばせませんでした。

ドル円日足

 日足で見ると、月曜日から水曜日にかけてはしっかりした陽線を形成していますが、一昨年~昨年にかけても抵抗線として機能していた148円台はやはり重さを感じます。木曜日はかろうじて陽線でしたが前日の高値は抜けず、また金曜日は高値こそ更新したものの結果的にはボリンジャーバンドの2σに跳ね返され、長めの上ヒゲが付いた陰線で引けています。なお、今週の高値である148円80銭については昨年10月に行われた日銀決定会合の時の安値でもありますね。会合1日目が終わって、明日はいよいよ発表という夜の23時でした。『日銀、金利操作を再修正へ 長期金利1%超え柔軟に』という見出しのリーク記事(参照:日経新聞)が出たために円買いが入ったのですが、その時の安値がちょうど148円80銭でした。

もはや恒例になりつつある日銀発表前のリーク記事……。

週後半の上値を重くした要因のひとつとして、こうした観測報道への警戒感もあったかもしれませんね。

今週の相場格言 『相場は相場に聞け』

▶ 相場は相場に聞け

相場は自分の描いたストーリーに沿って進むものではない。「自分の考えに固執するな。思った方向に動かなければ自分の判断を疑い、謙虚に相場に向き合うべし」という、先人のありがた~い格言。

 「情報はしっかり仕入れた!こっちに動くはず!」と思っている時に逆行されると、「ただの調整でしょ?」「どうせすぐに戻ってくる」と思って損切りが遅れたり、ナンピンして傷口を広げたり、思考を放棄したお祈りトレードでギャンブル状態になってしまったりしますが、これは心を守るための人間の自然な防御反応です。自分を否定するのは苦痛ですからね……。でも、世界中の出来事を漏らさず把握できる人間なんていないのもまた事実。想定外の事態はいつでも発生し得るのです。

 ダウ理論にあるとおり、チャートはすべての事象を織り込んで動き続けています。「信じられるのは過去と現在の値動きだけ」という気持ちで、常に自分の思い込みと戦っていきたいものです。

何のために稼ぎたいの?

その夢、分の悪い賭けで潰して平気なの?

本気で稼ぎたいなら覚悟を持て!思考を止めるな!

……ってことだと思う~。

次週に向けて

 昨年末時点では「2024年はアメリカが利下げ、日本がマイナス金利解除に向かうので、年明けからドル安円高の流れになる」という見方も少なくなかったのに、年明けからあっという間に8円も円安方向に進んでいます。ところで、今年はアメリカ大統領選の年でもありますが、大統領選の序章は既に始まっています。共和党の最初の予備選がアメリカ時間の今週月曜日にアイオワ州で行われ、何かと話題のトランプ前大統領が快勝しました。前回トランプ氏が大統領選に勝利した2016年は、事前に「トランプ氏が勝てばドル安」と言われていましたが、ふたを開けてみれば大きくドル買いに傾きましたね。

 次週は日銀会合です。今回の会合で大きな変更がある可能性は低いものの、今後の変更を示唆する文言があれば大きな値動きになりかねません。また、月末のFOMCでも重視されるといわれる指標、PCEデフレータが金曜日に発表されます。大統領選のほうはまだまだ序盤とはいえ、何が起こるか分かりません。常にアンテナを張って、相場の声を聞きもらさないようにしたいですね。