【復習】2024-04-15⇒2024-04-19【相場材料とチャート】

この記事はで読むことができます。

ざっくり振り返る 最近の相場材料

今週はまずは各国の状況について、箇条書きでざっくり確認します。今週の出来事にはNEWマークを付けています。

アメリカ

・3月に発表されたPCEデフレータ⇒コアデフレータ(前年同月比)の伸びが鈍化。

・4月に発表された消費者物価指数(CPI)⇒引き続き堅調。

・4月に発表された生産者物価指数(PPI)⇒市場予想を下振れたものの、ドル売りは一時的。

・4月に発表されたISM製造業は市場予想を上振れ、基準となる50を上回り市場はドル買いで反応。非製造業は市場予想下振れで、市場はドル売りで反応。

・4月に発表された雇用関連のデータ⇒雇用統計JOLTSADPは、いずれも市場予想を上振れ。移民の増加が影響しているとの指摘。

NEW15日に発表された小売売上高⇒市場予想を上振れ。市場はドル買いで反応。

日本

・3月末に財務省・金融庁・日銀の3者会合が開かれ、次のステップであるレートチェックはいつ実施されてもおかしくない状況。

NEW 日米韓で初となる為替に関する共同声明を発表。日韓の協調介入の可能性も。

しっかり振り返る 今週の相場動向

今週の高値は火曜日、パウエルFRB議長の発言後に付けた154円70銭台後半。

安値は月曜日の始値である153円ちょうど付近でした。

今回は中東関連のニュースが多くありました。

一連の流れを時系列に沿ってしっかり振り返っていきます。

Sunday 日本時間の14日日曜日の未明、イランイスラエルに対し無人機による攻撃を開始

イランがイスラエルを攻撃する名分について。

今月1日、シリアの首都にあるイラン大使館の敷地内に空爆が行われたという事実があり、イラン側はこれを「イスラエルによる攻撃」と断定し報復を宣言したという経緯があります。

イランが攻撃したというニュースを受けて、土日でも相場が動いている仮想通貨サンデーダウは一時、急落しています。ただし、この攻撃は執拗なものではなく日本時間の朝のうちに収束。

イラン側は、「我々にとって、この件はこれで終わりだ。もしイスラエルが再び過ちを犯せば、我々はいっそう厳しく対処することになる。これは無法なイスラエル政権との対立であり、アメリカは干渉すべきではない」とする声明を出しています。また、イランは国連安全保障理事会において「アメリカがイランやその国民に対して軍事作戦を開始した場合は、イランは自国の権利を行使し、相応の対応をとることになる」との警告。

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

つまり、「イスラエルやアメリカがイランに対して次なるアクションを起こさない限り、イランとしては事態を悪化させるつもりはない」ということですね。

これを受けて、仮想通貨やサンデーダウはある程度、値を戻しています。

一方、イスラエル側は「48時間以内に報復する」と宣言。しかしその後、アメリカのバイデン大統領との電話会談を経てこの宣言を撤回しています。

Monday 15日月曜日、下窓を開けて153円近辺で始まったドル円は順調に窓を埋めて仲値にかけて153円40銭台に到達。イランの攻撃が苛烈なものではなかったことでリスクオフムードがいったん後退したことと、ゴトー日のドル買い・円売りとに支えられました。

東京時間のドル円以外の相場ですが、前週末に大きく売られていた豪ドルは週明け、買戻しからスタート。中東と地理的に近い欧州・英国の通貨は、対ドルでは引き続き上値は重いながらも円売りに支えられてクロス円では上昇しており、先週金曜日の下落分の半分以上を午前のうちに回復しています。

欧州時間が始まると、ユーロポンドは対ドルでも上昇を開始。

17時前後には154円に迫っていたドル円ですが、神田財務官の発言で急落しています。

神田財務官
神田財務官

為替について、主要国の財務官・中央銀行幹部と頻繁に連絡をとっている。

この夜は動きが多かったのですが、まずはアメリカの小売売上高。結果は前月比0.7%増と、市場予想の0.3%から上振れ。また、前回結果についても0.6%から0.9%に上方修正されています。強い数字に対し、市場はドル買いで反応ドル円も一気に154円に到達。ストップロスを巻き込んで154円半ばまで上昇しています。

ところが、23時半過ぎにドル円が急落。SNSでは「レートチェックか?」「介入か?という声もありましたが、原因はイスラエルの要人発言でした。

ガラント国防相
ガラント国防相

イランに報復する以外に選択肢はない。

これにより、リスクオフムードが再燃しドル買い・円買いが再開。ドル円・クロス円はそろって急落しましたが、ドル円はすぐにドル買いに支えられました。また、一部の報道によると「イスラエルの高官が、『イランに対する反撃が完了するまでラファ(ガザ南部)への地上侵攻を延期する』と宣言した」とのこと。このほか、中東情勢に関して多数の要人発言が報じられています。

バイデン大統領
バイデン大統領

米国はイスラエルの安全確保に取り組む。

中東紛争の拡大を阻止したい。

イランの外相
イランの外相

イラン政府は緊張の高まりを望まないが、イスラエルが報復すれば即座に、より強力な対応をとる

ただ、「イスラエルは攻撃の選択肢として、死傷者を出さない方法を検討している」とも報じられており、為替相場は先週金曜日ほどの乱高下とはなりませんでした。ちなみに、この「死傷者を出さない選択肢」というのは、「テヘランにある政府施設への攻撃(=民間人への被害を抑える)」や「サイバー攻撃(=直接的な死傷者ゼロ)」を指しているとの報道でした。

Tuesday 16日火曜日の東京時間は、中国の指標が複数発表されています。第1四半期GDPは前年比5.3%増と市場予想を上振れ。これで中国が今年の目標に掲げる年間GDP5.0%が現実味を帯びてきました。一方で、第1四半期の不動産投資は前年比-9.5%と減少ペースが加速したほか、3月の鉱工業生産は4.5%増で市場予想を下振れ。中国は不動産不況が深刻化していますから、良好な結果とは言い難いデータです。中国の景気に左右されやすいオセアニア通貨は、中国GDPの上振れサプライズで直後は買われましたが、その後はリスクオフのドル買いに押されています。

円売りが再開したのは午後2時ごろ。アメリカのメディアが「米国当局者によれば、イランの攻撃に対するイスラエルの対応は限定的なものになる可能性が高い」と報じたことで、リスクオフによる円買いがやや巻き戻されたことが一因とみられます。

一方、アメリカでは強いインフレ指標が続いていることから、リスクオフムードが緩んでもドル売りは出にくい状況。日本の通貨当局からのけん制発言はこれまでも多数報じられていますが、この日は韓国の通貨当局も「為替の動向、注意深く監視している。過度に投機的な動きは望ましくない。」と、けん制発言をしました。韓国ウォンが一時1ドル1400ウォンと、1年5か月ぶりの安値を付けたことを受けての発言でした。

ニューヨーク市場のオープンとともに高値を更新し始めたドル円でしたが、154円70銭を抜けたところで急落しています。特別新規の材料はなく、介入に神経質になっている市場で利確と損切りが交錯したものとされています。昨年も為替介入が警戒されていた時期に同じようなことがありました。

その後はパウエルFRB議長のタカ発言を受けてドル円は再び高値を更新。今週の最高値である154円77銭をつけています。為替介入に対する警戒感はあるもののドル円を売る理由もなく、高値圏で揉み合ったまま引けています。

パウエルFRB議長
パウエルFRB議長

インフレは昨年末に速いペースで鈍化したものの、その後は進展が見られない。

2%の物価目標に向かっているという、利下げに先立って必要な確信を得るのにはより長い時間がかかる可能性が高い。

したがって、利下げ時期はこれまで考えていたよりも遅くなるという認識。

Wednesday 17日水曜日は、前日のニューヨーク時間の流れを引き継いで高値圏の揉み合いに終始。夜までは動きの少ない1日となっています。

日本時間の深夜、日本・アメリカ・韓国の3ヵ国合同での為替に関する声明が発表されて急速にドル売り・円売りが進みました。

日米韓財務相会合 共同声明:

最近の急速な円安・ウォン安への日韓の深刻な懸念を認識し、外国為替市場の動向について引き続き緊密に協議する

また、これに関連して神田財務官からコメントが出ています。

神田財務官
神田財務官

日米韓による為替に関する共同声明は、おそらく史上初めて。

米国もまじえて円安・ウォン安への懸念を共有した。

(円安に対する問題意識について米国の理解を得られているかと質問されて)各国当局とは常に議論しており、しっかりと意思疎通をしている。

154円台後半で高値更新の機会をうかがっていたドル円は、154円台前半に下落しています。

Thursday 18日木曜日の東京時間は、前夜に発表された日米韓の共同声明を受けて日韓の協調介入も噂されるなか、ドルは買われにくく円は売られにくい状況が続きました。仲値のドル買いが引くとドル円は一時154円を割りましたが、153円台ではすばやく買いが入り153円20~30銭の水準に戻ってきています。

欧州時間が始まってからは、利下げ織り込みが後退している米ドルについては買いが進行しています。

Friday 19日金曜日の東京時間は、中東情勢のニュースによって波乱の展開となりました。

日本の仲値が決まった後、10時過ぎにドル円・クロス円が急落しています。これは、「イランシリアイラクで同時に爆発が確認された」と一部メディアが報じたことが原因でした。また、「イスラエル機がシリアの空港を攻撃している」「イランの核施設に攻撃か」という情報も流れました。特に「」という単語が出たことで強いドル買い・円買い・スイスフラン買い・ゴールド買いが発生、株やオセアニア通貨・新興国通貨は急落しています。30分後には一部メディアが「米政府高官が『イスラエルがイランに攻撃したことを確認した』とコメントした」と報じたこともあり、リスクオフムードは加速。

しかし12時ごろに「イラン国内の施設に被害はなかった」との情報が流れて、巻き戻しが始まります。さらに12時半頃、「イラン高官から『イランに対するミサイル攻撃はなかった』とのコメントが出た」との報道。ところが、13時になると再び「イスラエルがイランのイスファハン州付近に向けて報復攻撃をした」というヘッドラインが流れるなど、情報が錯綜。

夕方までに整理された情報では、どうやら「イランで爆発音が聞こえた」というのは事実。しかし、イラン陣営によると「イスラエルの無人機(偵察機?)をイランが撃墜したことによる音」だったとのこと。イランのテレビ局では関係筋の話として「イスファハン州を含め、イランに対する国外からの攻撃はなかった」と放送。また、米当局者からは「イスラエルは核施設に対して攻撃するつもりはない」とコメントが出ました。さらに、イランは「イスラエルに」としています。

情報が整理されるにつれてポジションが巻き戻され、ロンドン時間の序盤には全戻し

かしこそうな
シカさん
かしこそうな シカさん

あれだけ大きく動いたのに、まさかの全戻し。

SNSを見る限り、振り回されて損切りするトレーダーも多かった様子。

国家間のいざこざは情報戦も行われているから、手に入ったニュースに飛びついてトレードするのは危険かもしれません。

ドル円は日米韓の共同声明が出る前の水準はやはり重たく高値こそ更新できないものの、ニューヨーク時間の引けにかけては154円60銭台までしっかり戻して日足は陽線で引けています。

次週に向けて

次週の注目材料とチャートの分析はこちらの記事で。最後までお読みいただき、ありがとうございました!